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小さな雪だるまの物語

sakura01-006 小さな雪だるまの物語

 

森は、しんしんと降る雪の中、静まりかえっていました。

すっかり日も落ちて、
森の中央にある 泉のほとりの草の陰には、
ぶるぶると 震えている者が おりました。

 

それは、小さな 雪だるまでした。

日中、小猿たちが きゃっきゃと 大騒ぎしながら つくった、
ひしゃげたかたちの 小さな雪だるま。

彼女は、寒さに 震えていました。

 

雪は、ひとひらの雪である限り、寒さを感じることは ありません。

が、地上に降り立ち、なにかの偶然が重なって
なんらかのカタチを持つようになると、
雪は 雪ではなくなり、そのカタチのものとして 生きるようになります。

雪だるまという姿になった彼女は、
雪だるまとして生きるようになった瞬間に、
「寒い」という感覚を 知りました。

 

小猿たちが それぞれの家へ帰ってしまった後、
小さな雪だるまは、ひとり残され、ぶるぶると 震えていました。

ふと 風が止み、ざわめきかけていた木々が 静かになりました。

雲で覆われていた お月さまが、
ぼんやりとした光とともに、あくびを しながら 顔をのぞかせています。

 

と そのとき、
泉のほとりに、白く美しいものが そっと 姿を あらわしました。

小さな雪だるまが、
驚きのあまり 動けず、じっと 様子を伺っていると、
その 白く美しき存在は、ゆったりと、泉の水を 飲み始めました。

背中では、白く大きな翼が 煌めいています。

なめらかな肌。
ふさふさと揺れる尾。
優しい まなざし。

 

その 白く美しき生き物は、ユニコーンでした。

ユニコーンが 旅の途中で この泉に 降り立ち、
羽を休めて 水を飲んでいるのでした。

静かに 降り続く 雪の中、こんこんと湧き出る泉のほとりで、
ユニコーンは、ぶるぶるっと 身体を揺らし、
大きく空を 仰ぎました。

 

その美しい光景に、
小さな雪だるまは、我を忘れて ぽかんと 口をあけたまま
見とれていました。

さきほどまで感じていた 寒さは どこかへ吹き飛び、
自分が 小さな ひしゃげた雪だるまであることも、忘れて。

草の陰に隠れた雪だるまが 見つめる中、
ユニコーンは、しなやかな動作で 歩き出すと、
1本の大きな木の下で、長い足を折り、横たわりました。

どうやら 今夜は ここで 夜明けを待つことにしたようです。
やがて、彼は 静かに 眠りの中へ 落ちてゆきました。

 

動かなくなった ユニコーンの姿を見て、
小さな雪だるまは、そっと 草の陰から 飛び出しました。

ぎこちなく ぴょこぴょこと 飛び歩き、
ユニコーンの眠る 大きな木の下へ たどりつくと、
彼女は、じっと 彼の寝顔を 見つめました。

近くで見るユニコーンは、それは それは 美しい動物で、
その穏やかな寝顔は、
彼女の凍えた心を 溶かすべく、微笑んでいるかのようでした。

 

小さな雪だるまは、さらに 彼に近づいて、
彼の大きな翼に、ちょん、と 触れてみました。

それは とても 温かくて 柔らかく、
その心地よい感触に
彼女の胸は、幸せで いっぱいになりました。

この「幸せ」という感覚は、
雪だるまとしても、ひとひらの雪としても、
いままでに 経験したことのない
彼女にとって 初めて知るものでした。

小さな雪だるまは、そのまま ユニコーンの翼の下に もぐりこむと、
彼に そっと もたれかかり、すやすやと 眠ってしまいました。

 

急に感じた 氷のような冷たさに、
ユニコーンは 目を覚まして、そっと 様子を うかがいました。

翼の下には、どこから 来たのか、
小さな雪だるまが、自分に寄り添って、眠っていました。

彼は、ふっと 頬を緩めると、雪だるまを ふわりと 抱きかかえ、
ふたたび 眠りの世界へと 戻ってゆきました。

寒がりのお月さまは、また 雲の中へと 姿を隠し、
静かな黒い森の中で、雪は、しんしんと 降り続けていました。

 

 

朝陽が昇る前に、雪の軍隊は 引き揚げたようです。

大きな木の下にも、ひとすじの明るい光が 差し込んできて、
ユニコーンは 目を覚ましました。

はっと 気づいて 翼を開くと、
そこにいたはずの 小さな雪だるまの姿が ありません。

 

小さな ひしゃげた雪だるまは、
夜の間に、ユニコーンの体温によって 溶け、
消えてしまったのでした。

彼の温かな腕の中で、幸せな気持ちのまま。

 

呆然としたユニコーンは、
しばらくの間 悼むように まぶたを ぎゅっと 閉じていましたが、
やがて、ふたたび 立ち上がりました。

そして、2、3度 大きく 翼を はためかせると、
大空へと 飛び立ってゆきました。

 

 

ユニコーンが眠っていた場所、
つまり、雪だるまが 彼の翼に包まれて 消えていった場所には、
この寒さだというのに
小さなスミレが 咲いていました。

雪だるまが 溶け、その溶け水の温かさに 滋養を得て、
春になったと勘違いしたまま
花びらを開いたのでしょうか?

小さな白いスミレが、
寒さに 震えながらも、精一杯の強さで、ひとり 咲いていました。

 

 

大きな木の向こう側は、
空と大地が 溶け合い、どこまでも 続いているかのようでした。

 

 

~ 2009.12.16 ~

 

 

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