~☆~ 光に触れるボディワーク&セラピー ~☆~ 埼玉県川口市の一日おひとりさま限定サロンです

恋するオーロラ

sakura01-006  恋するオーロラ

 

あぁ、どうしよう。
彼がいる・・・。

あたしは、
毎日 散歩帰りに 立ち寄っている 駅前のスーパーに入ると、
すばやく 店内を見回した。

 

彼は、このスーパーの店員さん。

社員なのか、アルバイトなのかは、わからない。

だけど、先月は 新人さんのレジ打ち指導をしていたから、
そこそこ 中堅どころでは あるのだろう。

ちょっと おっとりした感じの、
いまいち あかぬけない 爽やかさ。

なんだか SMAPの剛くんを思わせるような雰囲気を持つ彼を
最初に意識したのは、数ヶ月前のことだった。

 

いつもより 多く歩き、疲れて帰ってきた あたしが
たまたま 並んだのが、彼の担当するレジだった。

無表情な あたしの目を とらえ、
お釣りとポイントカードを差し出しながら。

彼は、柔らかい笑顔で、ひとこと 言った。

「ありがとうございました」

 

それが、「(お買い上げくださいまして)ありがとうございました」
という意味なのは、
充分すぎるほど わかっていたけれど。

その笑顔に カタマッてしまった あたしは、
あいまいに 微笑むと、すぐに 目をそらして 軽く会釈し、
逃げるように 足早に、店を 出た。

 

あきらかに あたしより若い、彼。

だけど その 柔らかい笑顔が見たくて、
あたしは 毎晩 そのスーパーに 立ち寄るようになった。

忙しい時間帯には、
彼は たいてい 数台あるレジのうちのひとつに 入っていた。

あたしは、なるべく さりげない顔をして 彼のレジへと並び、
さりげなく 目を合わせては 彼の笑顔に癒されて・・・

次第に、あたしの返す笑顔も、明るくなっていくのが わかった。

 

だけど、先週から、ナラくん・・・

彼の名前は、ナラくん。
名札に そう書いてあったのを、あたしは しっかりと 胸に刻み込んでいた。

彼、ナラくんの姿が 見あたらなくなったのは、
先週のことだった。

スーパーの仕事は、レジ打ちだけではない。
店内で 商品整理を やっているのかもしれない。
売り場の奥で、魚の下処理でも しているのかもしれない。

そう思いながらも、あたしは 落ち着かなくなった。

スーパーを 辞めてしまったのだろうか?
彼は 学生だったのかしら。
就職が決まったのかしら。

 

ぐるぐる回るアタマの中と同様に、
ドッグフードの売り場を ぐるぐると往復する あたしに、
どん!と ダンボールが ぶつかってきた。

「も、申し訳ありませんっ
お怪我は ございませんでしたか?」

見上げると、そこには ナラくんの真っ赤な顔があった。

 

あ・・・

あたしは、そのまま、猛ダッシュで 出口に向かうと、
買物もせず、ナラくんのいた場所を 振り返りもせず、
店を 飛び出した。

どうしちゃったんだろう
あたし。

わけもわからず、涙が 出てきた。

胸のどきどきは、家に着いても、まだ
おさまらなかった。

 

 

その翌日から、ナラくんは レジ係に復活したが、
あたしは もう ナラくんの列には 並べなくなった。

よそのスーパーへ行くのは遠回りになるから
やっぱり ここへ来てしまうのだけど。

ナラくんの姿を確認すると、それだけで 胸がいっぱいになり、
なんとなく 彼を避けて
別のひとの列に 並ぶようになってしまっていた。

 

 

あぁ、どうしよう。
彼がいる・・・。

あたしは、今日も すばやく 店内を見回し、
ビールの陳列棚の前にいるナラくんの姿を 横目で とらえた。

そそくさと 必要なものを カゴにいれ、
あたしは、「主任」と呼ばれているベテラン女性店員さんの列へと
並んだ。

エコバッグを かばんから取り出し、
「NO レジ袋カード」を カゴに入れて、順番を待つ。

ところが、
あたしの番が来ると、信じられないことが 起こった。

 

ナラくんが、「主任」に声をかけ、レジを替わったのだ。

「主任」は、ナラくんに 小さな声で「お疲れさまでした」と見送られ、
背中に 疲れをにじませながら、レジを 離れて行った。

 

「お待たせいたしました」

ちょっと 頬を赤くした ナラくんが、
いつものように、私の目を まっすぐに とらえて、微笑んだ。

 

あたしは・・・
あたしは・・・

どきどきする心臓が 胸から 飛びだしそうになって・・・
なにも考えられなくなって・・・

ぽーんと、カゴを乗り越えると、
ナラくんの 白く細い首を 目掛けて。

抱きついた!!

 

 

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「ちょ、ちょっと、オーロラ!なにやってんのよ!?」

「だ、大丈夫ですよ。ぼく、イヌ、大好きですから・・・」

 

ナラくんは、
とつぜん 飛びついてきた あたしに 驚いたものの、
思っていたよりも ずっと しっかりとした腕で
あたしを 抱きとめると、
そのまま、あたしの飼い主へ、あたしを 引き渡した。

 

 

ここは、駅前の、ペット入店OKのスーパー。

ペットOKとはいえ、それなりの厳しい条件は あるらしいが、
とにかく、あたしは 毎日 ここへ 出入りできている。

だから、ナラくんにも、出会えた。
ここで、ナラくんに、恋をした。

 

しょぼん、と下を向く あたしを にらみながら、
あたしの飼い主は、
ナラくんに 何度も、アタマを下げていた。

 

「ほんと、ごめんなさいね。このコったら・・・」

「いえいえ、ほんとに 大丈夫ですよ。
小さくて、かわいいですね。オーロラちゃん、って 言うんですか?」

「ええ。甘やかして育てたものだから・・・」

 

・・・いつのまにか 話が はずんでいる!

 

あたしは プイ、と 横を向いた。

ナラくんは、あたしのことを見て
いつも 頬を染めていたんじゃなかったの!?

 

「ちょっと 待ってよ、オーロラ!!」

ナラくんと 親しげに微笑みをかわす
あたしの飼い主を 引っ張り、
あたしは 外に出た。

 

春とはいえ、まだ、夜は 風が冷たい。

あたしは、背中に ナラくんの視線を感じたけれど、
つん、と 鼻先を突き上げ、
あたしの飼い主を 引っ張って、歩き出した。

サヨナラ。
あたしの、ナラくん・・・。

 

空を見上げると、
細いお月さまが、青白く光っていた。

だけど、
その輪郭は、なぜか・・

にじんでいるように 見えた。

 

 

~ 2009.04.28 ~

 

 

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